甦った勤労

身体は問題ないが、精神がまだついていかない。
大したスキルもなく、何処へ行っても環境や待遇が飛躍的に向上することなどないと分かっているつもりではあるが。
最初の数日はずっと省みる事の無かった前職時代の記憶が急に思い出された。
この時間はあの取引先に行ってたなーとか。
社用車のフロントガラス越しの風景、デスクのパソコンのホーム画面、なんてこと無い日々。
これならあの会社にいても変わらなかったのではないか、とも思った。
思い出は脳内で美化されていくし、本当に血を吐くほど悩んだ末に決断したので間違ってはいない筈。と思いたい。
まぁ2年や3年余分に在籍しても転職する日は結局やって来た事だろう。
ただ今は再び0から積み上げていく事への不安に震えているだけだ。
将来や金銭の事を考えなければ、慣れ親しんだバイト先が一番楽しく自分に合った仕事だったのは明らか。
でも30や40までアルバイトで生きていくわけにもいかない。
前の会社に就職した時もバイト時代の事をよく思い出した。
今回も揺り戻しみたいな状態になって急に思い出したのだろう。
また一つ一つやっていくしかない。
好きなことは仕事と切り離したところでやっていく。
その果てにチャンスが巡ってくればまた考えればいい。
目先の厄介事から逃げて、何処へ辿り着いたとしても嫌な事はあるしその逆も然り。
「ここであと何十年も働くと思うと嫌になる」と新しい職場の先輩は言っていた。
「5年10年先の事をいつも考えなきゃいけないよ」昔、昼休みの喫煙所前でよく顔を合わせたおじさんは言っていた。
昔の上司、バイト先の先輩、身の回りの人生の先輩方、皆言い回しは違うが同じような事を伝えてくれていたのかもしれない。
自分の浅はかさ、失望と希望、変わるものと変わらないもの、心の持ち様。
過ぎた時間は戻ってはこないし、戻りたくもない。
いや、何にも不安が無かった時期があったとすれば戻ってみたい気もする。
二十歳を過ぎたらあっという間だと言っていた先輩がいたが、今更意味を噛み締めている。
あれから10年ちかく時が流れたが、まるで先週のような気がする。

自分の甘さを噛み締めながら。
出来る範囲で焦らず。
無理はしない。

雪で出勤が憂鬱であるが。