悲しいな

感情の発露に乏しい僕は、こういう出来事に際してもあまり涙は出ない。
叔父と母は憔悴し、従兄は号泣していたという。
もう15年になるか、死期の近付いた祖父の見舞いの帰りにも同じ気持ちになった。
泣き腫らし隣に座った従兄は「お前は強いな」と言ったが、それはきっと違う。
違う。悲しくないわけじゃない。
ただ事の前で立ち尽くしている。

今日になってあの家に行った事があると思い出した。
思い出した。彼らの、最後の幸せだった時を。