田舎の夏、甲虫の夏

低い羽音を轟かせて繰り返し網戸にタックルしてくる虫を弾き飛ばしたら変な汁を掛けられた。
26歳、絶望の夏。

たまたま目にした大きいお友達向けの漫画が良くて、そっとAmazonのリストに追加した。
田舎から東京に出て数年後にセンチメンタリズムと共に帰郷するというオプションはかつての僕にも存在したわけだが。
仮にそのルートに入ってもツンデレ幼馴染みやバツイチになっていた美人同級生が待っていてくれるわけでもない。
犬と散歩する畦道の途中で、また無為に時間を過ごしてしまった己が不明を悔いるだけである。
何もなかった。

望んだものは向こうから歩いてきてはくれない。
前さえ向いていればまだ希望はある。
そう信じていないとやっていけない。