ビヨンド・ザ・ライン

どうにも打ち解けられない後輩と同じシフト。
フォローするつもりが更なるミスを誘発し先輩の失笑を買うのだった。
年末は一人でも持て余すほどの仕事しかないのだが、馬鹿な社員どもが平生ギリギリの人数で店を回しているツケが一気に来る。
もっと人員欲しい時あったぞ店長。
で、普段一人でやっている所に無理矢理余った人間を突っ込んで来るので調子が狂う。
一人なら出来るのだ。しかし周りに誰が居ようと居まいといつも通りに出来なければ、やはりまだ青いという事だろう。
同点で迎えた延長12回と前半で大差をつけられた試合とでスイングが変わるようでは駄目なのだ。
出しきった今日の先に今日より素晴らしい明日がある気がする。
何かを頑張った経験などここ5年くらい何も無いけれども。

クリスマスまでは独りで町を歩いていても、年末の空気と電飾にウキウキしていた。
雨の中をバイトへ行って帰ってきたらたまらなく憂鬱になってしまった。車を貸してもらえたので濡れなかったのがせめてもの救い。
寒さに閉ざされた冬を通り過ぎて暖かな季節がやって来ても結局は独り。
俺は一人でもやれる、立派に立っていられるんだぜ!という強い「ひとり」じゃない、ただただ惨めな一人。
何も見つけられない、何処へも歩き出せない、全て己の不明の仕業。
こんな仄暗い感情も寝て起きて朝飯を食う頃には忘れてしまう。夜になってふとした瞬間に、しゃっくりみたいにやって来ては元来暗い考えに真っ黒い墨を上塗りする。